「バイデン政権の国防予算は研究開発を加速する一方で調達を削減-中国を見据える(2021年5月28日記事)」
1.元記事(Defense News)
2.記事要旨
- バイデン政権は自身初となる国防予算について、7150億ドル(≒73兆円)を米議会に要求した。
- 前年度比110億ドルの増額であり、Lloyd Austin国防長官は研究開発および試験評価に対する史上最大の要求になったことを説明。
- 調達予算を80億ドル減額(前年度比6%減:1336億ドル)した一方で、中国抑止を見据えた先端技術開発や試験に関する予算を55億ドル増額(前年度比:1120億ドル)した。
- 予算内訳サマリは以下の通り:
- 1740億ドル:陸軍(前年度比150億ドル減)
- 2070億ドル:海軍(前年度比460億ドル減)
- 2040億ドル:空軍(前年度比880億ドル減)
- 175億ドル:宇宙軍(前年度は154億ドル)
- 51億ドル:Pacific Deterrence Initiative(太平洋抑止イニシアチブ)の立ち上げ費用
- 49億ドル:統合軍事力の強化費
- 1.5億ドル:訓練や研究開発イノベーション費
- 2300万ドル:部隊編成や態勢費
- 予算編成の意図は、装備品調達にお金をかけるのではなく、中国抑止を見据えて、5G、電子工学、AI、極超音速ミサイルなどの新技術に対して予算の選択と集中を行うもの。
- なお、今回の予算要求はトランプ前政権と変わらず、中国重視・レガシー武器の削減・将来技術重視・核費用増強である。
3.Leader’s ほそく
当時の他の様々なメディアを見ますと、100億ドル増とはいえ前年度予算から見て、ほぼ横ばいに近い予算要求となったことから、「バイデンは国防の意識が薄いのではないか」だとか「がっかりだ」といったコメントが多く見受けられました。しかし本記事で述べられている通り、適当に予算を上げるのではなく非常によく考えて「選択と集中」をしている賢い要求だと個人的に思います。特にトランプとは違う点として特筆すべきと考えるのは、51億ドルを要求するPacific Deterrence Initiativeだと思います。これはインド太平洋地域における米軍の軍事抑止力の強化を目指す活動を指しますが、バイデン政権は最大の脅威である中国に対しては、インド太平洋国家との強靭な同盟関係が必要であると考えており、そのマインドが強く表れていますね。国防に対するバイデンの基本的な考え方はトランプと同じでありますので、引き続き対中政策は強いものになる見込みです。
それでは、Have a nice day!