Thought Leadership ぶろぐ

当面は米国の安全保障政策やその動向について取り上げたいと思います。(週末更新)

「綱渡り的な行動:どのようにして厳しい予算で研究&調達を賄うか」(2021年3月17日記事)

1.元記事(Defense News)

www.defensenews.com

 

2.記事要旨

  • かつてEric Schmidt前Google CEOが言ったように、米国防総省DoD)の問題はイノベーションを起こすことでなくどのように実装するかしか考えていない
  • 古き産業時代の予算要求プロセスは、新技術の"墓場"を作ることになり、柔軟な投資やプロトタイプ、コンセプトの創造を阻んでいる
  • この状況を受けて、バイデン政権は3月3日に公表したInterim National Security Strategy Guidance(暫定国家安全保障戦略)において、責任感のある米軍の活用を強調、最も重要な国防的優先事項の一つは、DoDの調達・研究はレガシー装備品から最先端装備品への新陳代謝を早めることが示されている
  • 国防費をいくら使うかという視点から、どのように使うかというマインドセットに動いていると下院軍事委員会(HASC)会長のAdam Smith氏は語る

 

3.Leader’s ほそく

前トランプ政権時と比べ、米国の2021年度国防予算はほぼ前年度横ばいです。この中身を紐解くと、決して国防費を単純に削減しているのではなく、本記事が述べているように昔ながらの旧態依然のウェポンシステムをリタイアさせ、最先端技術に投資を集中させるという考えが垣間見えます。

 

それでは、Have a nice day!

「 米バイデン政権に対する北朝鮮のメッセージ:"騒ぎを起こすことは控えた方がいい"」(2021年3月16日記事)

1.元記事(New York Times

www.nytimes.com

 

2.記事要旨

  • 北朝鮮はこの度初めて米バイデン政権に対して、米国および韓国による合同演習に対して「余計な騒ぎを起こさない方が良い」との警告を打ち出した
  • 当時はBlinken国務長官とAustin国防長官が日本政府の幹部と、北朝鮮核兵器開発および中国による干渉増加を受けた同盟強化に関する会議を実施し始めたところであった
  • キム・ヨジョン(金正恩の報道官)は声明で「向こう4年を安泰で生き延びたいのなら余計なことはしない方が良い」と発表した
  • ソウル市北朝鮮研究大学教授によれば、これは米国および韓国に圧力をかける狙いがあるとのこと

3.Leader’s ほそく

北朝鮮の核開発問題は、特に日米共にIndo-Pacific(インド太平洋)の安全保障面で大きく懸念している。最近の北朝鮮大陸間弾道ミサイルは米国が射程圏内に入っている為、米国としては同盟国の日本や韓国、また当該地域に駐在する在○米軍との連携を以て北朝鮮に対する抑止をしたいところですね。一方で米国は北朝鮮よりも最大の脅威は軍事力・経済力ともに圧倒する中国であるとみていることから、どのようにしてユーラシア大陸の脅威に対抗するかを考える必要があり、日本も斯様な状況でどのような価値を発揮するのか問われていると思います。

 

それでは、Have a nice day!

「2020年の米大統領選に対してロシア・イランが情報操作を実行」(2021年3月16日記事)

1.元記事(Wall Street Journal

Russia, Iran Acted to Influence 2020 Presidential Election, Report Says

https://www.wsj.com/articles/putin-authorized-influence-operations-to-hurt-bidens-2020-candidacy-report-says-11615918958

 

2.記事要旨

  • 米国諜報機関の見解によれば、ロシアおよびイラン政府は米国の投票者に対する情報操作活動(intelligence operation)を実施していたことが分かった
  • これは民主主義に対する米国市民の信頼転覆を狙ったとみられる
  • プーチン大統領はバイデン大統領の選挙活動を妨害し、トランプ政権の再当選を支援するよう斯様な活動の支援をするような承認を下したとみられる
  • またイランのKhamenei司法長官はトランプ政権の再選挙活動を妨げるようなデジタル操作をしていたと考えられている
  • 一方で、中国は一連の活動には参画しなかったとみられる。これは米国家情報国長官室(Office of the Director of National Intelligence)公表のレポートによれば、トランプであろうがバイデンであろうがどちらも中国に対して好ましい考えを持っている訳ではない為であるとのこと
  • キューバベネズエラ、その他軍主導組織であるHezbollah(レバノンシーア派イスラム主義政府組織)も幾らか情報操作を実施したとみられるが、ロシア・イラン両国と比べると影響は小さいと考えられる

3.Leader’s ほそく

米国は国家安全保障政策における一つの観点として、日本は勿論、台湾などの民主主義国家/地域との同盟を強くしようとしています。この動きはNear-peer competitorと呼ばれる中国、ロシア、イランなどには脅威になっている為、如何にして民主主義の考えを覆そうかと考えるきっかけになっております。前トランプ政権は米国至上主義を掲げ、他国よりも米国中心の経済発展に焦点を当てたため同盟国との連携が疎かになりました。これを好機と捉えたのが競争国の考えです。次の政権もトランプが担当した方が彼らとしても安全保障面でメリットがある為です。バイデンになり斯様な考えが元に戻りましたので、引き続き民主主義の転覆他、様々な方法で米国の覇権を覆す努力をするだろうと考えられます。

 

それでは、Have a nice day!

「米国が宇宙領域において中国との競争に勝つには新たな仕組みが必要」(2021年3月16日記事)

1.元記事(Defense News)

www.defensenews.com

 

2.記事要旨

  • 2020年は中国にとって、宇宙プログラムのブレイクスルーの年となった(測位衛星Baidu-3の打ち上げ、中国初となる火星への無人探査機打ち上げ、月面サンプルの採取&帰還など)
  • 2015年から中国は宇宙ドメインを戦域として見ており、人民解放軍(PLA)に戦略支援部隊(Stategic Support Force)を設置し、既存の中国国家宇宙局のサポート役として位置付けている
  • 既に2014年から、10社の宇宙開発企業への投資加速(国家もしくは民間主導のものを含む)や制限情報の開示をしている
  • 他国と何が違うのかというと、政府主導の経済(Command Economy)により政府が積極的に投資を行っているという点である(代表的な3社は既に宇宙射出においてOperationalな状態にある)
  • 米国は世界の国際ベンチャーキャピタルのうち52%を単独で支出しているので、一見多く見えるが、その目的は国家安全保障が目的である
  • 一方中国はCivil, Defense, Commercialの3つの目的それぞれに対して積極的に投資しているのである
  • 米国が中国より先に行くには、政府が宇宙の優位性に係る定義と民側との対話を促進し、常時収入源になること検討することである(本記事発行日の前後で公表された大統領令「米国のサプライチェーン」は良い例)
  • これは、例えば革新的マッチング制度(イノベーションを起こす役割が与えられた米空軍のプログラムAFWERXとベンチャー企業のマッチング)や、政府主導の低金利貸付制度などが良いのでないかとされている

3.Leader’s ほそく

宇宙は第4の戦域として米中のみならず日本でも認識されています。中国は共産党が戦略的に国のお金を積極投資するので、企業は安心してどんどん技術開発を行っていける文化と環境があります。日本も出遅れないように、積極投資できればよいと思います。

 

それでは、Have a nice day!

 

「米国防総省は重要なシステムのネットワーク等を早急に復旧できる後方支援部隊が必要」(2021年3月16日記事)

1.元記事(C4ISNET)

www.c4isrnet.com

 

2.記事要旨

  • 昨今のサイバー攻撃状況を踏まえて、超党派(Bipartisan)のCyberspace Solarium Commission(2019年に米議会によって設置されたサイバー版の9.11を防ぐためのサイバー戦略策定を行う委員会)は、州兵と予備兵を使って、対危機特殊サイバー予備軍(Special Cyber Reserve Force for Crises)を設置することをレコメンドした
  • 2021年の国防政策法に則り、DoDはこのアイデアについて検討しなければならないことになっている
  • 州兵と予備兵には、大手サイバー企業などに所属する者が多くいる為、これを活用しない手はないとのこと
  • テキサスの議員は、実際にこういった州兵が重要インフラを保護できるような法案を提出している
  • USCYBERCOMが創設されてから10年が経過、彼らの能力を補完するためにも使用できる

3.Leader’s ほそく

とても良い案だと個人的に思っております。日本でも予備自衛官制度はありますが、そのサイバー版は現時点ではまだ無いですね。このような仕組みが出来れば、日本政府や防衛省のサイバー人材不足を解消できるかもしれません。但しその場合、同時に政府保有のシステムの中身を見ることが出来てしまうので、セキュリティクリアランス制度を日本でもしっかり構築して、人的セキュリティの向上に努めなければならないと考えます。

それでは、Have a nice day!

 

「サイバー戦と情報戦を統合するには更なる検討が必要 - 米幹部談」(2021年3月6日記事)

1.元記事(C4ISNET)

www.c4isrnet.com

 

2.記事要旨

  • Thomas Wingfield前トランプ政権時の国防次官補・サイバー政策担当(Deputy assisstant secretary of Defense for Cyber Policy)によれば、サイバー能力だけでみると過渡期であることから、サイバー単体で見るのではなく情報戦(Information Operation)と共に考えるべきだと主張
  • なぜならば、情報戦はかつてのような物理面でなく、サイバー面が多くなってきているため
  • Wingfield氏は、トランプ政権時に国防次官に対して、CyberとInformationの両方に係る作戦について報告するようなスキームを仕掛けている(現国防長官のLloyd Austin氏は、国防総省[DoD]の情報戦に係るサイバー態勢について、どう作戦を実行するか見直す方針)
  • 国家安全保障局NSA)と米サイバー軍(USCYBERCOM)のDual hat分離に関する議論については、現状のDual hat状態でも機能しているので、性急に分離をした結果混乱を来して脆弱な状態を招くようなことがあってはならないと、同氏は指摘している

3.Leader’s ほそく

防衛面で日本より先行している米国では、サイバーと情報戦を一緒に考える風潮が高まっています。日本は憲法制約上、攻撃が出来ないのであくまで防御に徹する「サイバーセキュリティ」を考えますが、もう少し裾野をグレーゾーン(攻撃ではない偵察など)に広げてみるのはどうでしょうか。本記事で取り上げられているDual hatとは、NSA長官がCYBERCOMの長官を兼務していることを意味します。現在は日系3世のPaul Nakasone氏がその役務に就いていますね。

 

それでは、Have a nice day!

「中国国防費が2080億米ドルを超越」(2021年3月6日記事)

1.元記事(Defense News)

www.defensenews.com

 

2.記事要旨

  • 北京にて開催された全人代(National Peaple’s Congress)において、中国金融相が前会計年度の6.8%の国防費拡張を公表。全会計年度は前々年度の6.6%増であったため、さらに拡張されることを意味している(これは軍の近代化を継続する方針であることを示している)

  • 金額として、1.35兆元(およそ2080.58億米ドル)
  • 人民解放軍(PLA)の強化継続(東シナ海における軍事的関与の強化を含む)、国防に関連した科学技術の向上などに充てられる予定
  • 中国の会計年度は1月1日~12月31日
  • Google Earthでも中国のRenhai級護衛艦(Type 055)が128機の地対空ミサイルおよび対地クルーズミサイルを搭載していることが確認された

3.Leader's ほそく

中国の国防費は年々右肩上がりです。21年度は日本が約5兆円ですので、今回報道の規模(日本円にして約20兆円)と比較し4:1の比率となっていると言えます。一方で米国は約50兆円程度です。いつか米国を抜くなどと言われていますね。

それでは、Have a nice day!